夢を見た(秘密の居酒屋)

不思議なもので、夢でしか登場しないんだけど、夢ではしょっちゅう登場する謎の「飲み屋」ってのがある。昨夜、久々にその飲み屋が枕元に登場した。


その居酒屋の場所ってのは、ちょっと小粋なエリアにありましてね。


自分が仕事を終えての帰り道、大通りから地下街に入りこむと、階段降りてちょっとのところに誰も気付かないような「ドア」があるんです。
そこを開けると、知る人ぞ知る「廻り込みの通路」があるんだな。


その通路を歩いて地上に出ると、丁度、勤務先の会社の裏側にある居酒屋の、さらに奥の院みたいなとこに到達する。
奥の院と言っても一件だけの店があるわけではない。数件の長屋のような状態でバラック状の建造物がぎゅぎゅっと肩を寄せ合うようにして立ち並んでいる。


そこ、その場所、勤務先の裏側にある居酒屋へ正面切って行っても、そのまた裏側にあるというその場所に行き着くことはできない。「そっち」からは行けないのだ。「こっち」からしか行けないところに秘密性がある。


秘密性・・・それは京都祇園のような「一見さんお断り」のような敷居の高さ、値段の張り具合、芸妓さんの存在みたいなものとは全く異なる。はっきり言って、場末な店たちだ。
しかも、料理は「もつ煮」とか「秋刀魚塩焼き」みたいな激しくベタなメニュー。
客を魅了してやまないのは、・・・何もない。


でも、不思議な人気がある。


私がそこへ行って、料理にありつけたことは夢とはいえ、一度くらいしかない。
何度も伺っているのだが、ある時は満員、ある時は閉店後、ある時は休業日、ある時は店主不在と、なんやかやで店に入れてない。一件だけでなく、その周り全てに入れてない。
仕方がないので、いつも「廻り込み通路」を逆戻りし、地下街に戻り、変なエレベーターに乗って、地上8Fくらいの半端な展望レストランみたいなところで食事をすることになる。酒を飲みに行くつもりが、ナポリタンとかサンドウィッチを食べるはめになるのがいつもの常だ。


昨夜は、客は来ていないが、これから開店だからそのへんに座っときな!…と、店主に言われて、カウンターに座ることが出来た。
やがてそこに常連客のような爺さんたちがやってきた。


「おぅ、あんちゃん、久しぶり!今日は早いね、どしたー?」


「あ、いや、久しぶりにここの『肝焼き』が食いたくなりまして。」


「今からそんな、たそがれてちゃ先が思いやられるな、ふぉっふぉっふぉ。」


爺様たちはそんなことを言いながら、焼酎の養命酒割りを飲んでいる。


「あんちゃん、ごめん、肝がないや。代わりにトコブシを焼いてあげよう。」と店主。


「あ、どうも、すんません、ありがとうございます。」と私。


やがて目の前に『なまこ酢』が出てくる。「へい、おまち!」ってなかんじで。


注文が狂ってるが、ま、いつもそんなもんなんだ。全く違和感を感じない。


「あと、なんか串焼きを二〜三本お願いします。それからレモンハイ。」


「あいよー。」


そして、出てきたのが刺身の3点盛とハンバーグだった。
飲み物は、…なんだかとても群青色。


「店長、この飲み物は何です?」


「あ、それ? えっとね、レモンなかったんだよな、えーっとね、わっかんねぇや、けど、すんごく身体にいいもの入れといたよ!」


「ありがとう!」


「あ、そうだ、今日はね、スズキの良いのが入ってきてるんだよ、焼いてやろうか?」


「是非に!」


そして、太刀魚のフライが出てくる。


「これ、塩で食うとンまいぜ!」


「ありがとうございます!」


とにかく、頼んだものがその通りには絶対出てこない店。
普通だったら「なんだ、この店はっ!」と怒り心頭になるはずなんだろうけど、そうはならないんだよね。
最初からそれを「ルール」としてOKにしている自分。そして、客たち。


とにかくいちいち感謝の辞の私。
不思議なんだが、常に感謝しているのである。
ここでは感謝するのが全く自然の反応なのだ。


なんと大らかと言うか、いい加減なんだろう。。。




目が覚めた。

しかし、許容することの緩さがあれば、メニューが違うくらいは、なぁんてこともないんでしょうな。
日常生活においても、キャパというか、姿勢というか、そういうところを考え方一つアレンジしてみると、案外問題解決出来ちゃったりしてね。。。
そう、案外、取るに足らないことって、沢山あるのかもしれません。

(でもなぁ、店で注文したものが来ないのって、考えたら致命的じゃん!・・・苦笑)