夢を見た。（今回はちょっとセンチメンタルでござった）

どうやら「僕」は少年期の「僕」になっているようだ。。。

「僕」は「彼女」が好きだった。

「彼女」と言ってもべつに付き合っているわけではない。
だから、そういう風に言う資格は、僕にはないんだろう。
でも、「名字」で言うには憚られるし、まして「名前」で言うなんておこがましい。
だから「彼女」と言ってみる。　それだけの事。
いずれ、本当に付き合えるようになったら「彼女」の事を「カノジョ」とか、イントネーションを変えて言うくらいの権利は持てるかも知れない。（「いずれ」はやってこないんだけどさ。）

彼女はクラスでとても人気の子だった。

後から知ったんだけど、彼女にアタックしている男の子は実は沢山いたらしい。

水面下でね。

そんな彼女が、最終学年を待たずにこの春、引っ越すことになった。

父親の転勤。

行く先はここからはとても遠いところ。

その日まで、じっと過ごして『さようなら』となってしまうのはとても寂しい。
でも、僕には「告白」などという大それたことは、とてもじゃないが出来なかった。

どうしたらいいのだろう？

そんなことを思いながら、とうとう旅立つ日を明日に控えるタイミングになってしまった。

その日、クラスのみんなでお別れ会をやろうということになった。
当たり前の事だけど、十代の連中が集ったところで「飲み会」とはならない、喫茶店とかを借り切ってお別れ会を行うんだよね。
今にして思えば理解に苦しむよな。

…それが不思議でね。

酒を飲んでもいないのに皆んな饒舌になるんだよ。ヘンだろ？
何処をどうしたらそうなるんだろうね。十代のなせる技なのかな？

二次会になった。

いよいよこれでラスト。

それでも僕は何も切り出すことができなかった。
残念なことに、彼女の座っている席までかなりの距離がある。
間を遮るようにセットされているテーブルが疎ましくてね。

次に彼女が挨拶したらそれで散会。

そしてそのタイミングが直ぐにやってくる。
（どうしてこういう時って、時間の経つのが猛烈に速いんだろう？）

皆からのプレゼント贈呈と拍手。

とうとう散会。

僕はまだ何を言うこともできずにいた。

拍手に送られながら彼女が部屋を出て行こうとしていた。

退室間際のその時、

彼女が「こちら」を向いた。

僕との目線が合った。

しかし、この距離では話せる筈もない。

呟くように彼女は口を動かした。

『待っている』　と。

そして急に違う表情を、
ニコニコとした表情を、
彼女は自分の周りにふりまきながら会場を後にした。

・・・

目が覚めた。

意味不明に目頭が熱くなっていた。
夢から何かを読みとりたかったけど、あまりにも今は昔なセッティングだったな。
登場人物も知らない人たちだったりしてね。　無理（＾＾；

でも、新芽のけぶるような空気感。
そんなのを感じ取ることができた。
「僕もまだその匂いを忘れていなかったのか」と嬉しくもなった。

…そう、

もうン十年も前に、遠く置き去りにしてきた「淡いもの」ですよ。