「風魔」という小説は凄い。ぜひ!{読書感想文}


活字中毒になっているわけではないけど、カバンの中にはいつも本が一冊入っている私。
音楽でもそうなんだけど、歌を聴いたり、小説を読んだりすると、その間は「その世界」に浸れるのでそれが自分にとっての「休息」になったり「ガス抜き」になったりする。それって、とても便利なツールと言うか、世界なんだな。



実は、この3月の上旬からこっち、私は忍者ものの小説を読んでいました。
宮本昌孝さんの「風魔」(祥伝社・文庫)というやつです。


正直申しまして私、歴史物はとんと苦手であります。


まして、忍者ものなど今までほとんど触れたことがありません。
自分の記憶では精々、伊賀衆と甲賀衆がいて、服部半蔵がいて、カムイがいて(いない)、サスケや影丸がいて(いないいない!)、カバ丸がいる(だからいない!)程度の情報量しかない。
しかも、伊賀衆とか甲賀衆はどこの戦国武将のCIAだったのかなんて、全く知らん。
歴史そのものだって、主要な戦国武将くらいしか知らないし、その相関関係に至れば全くのシロウトと言ってよいだろう。



じゃぁなんで、そんな歴史シロウトの私がこの本を読む気になったのかと言うと、やたらとこの本を絶賛している人が近くにいたということ、そして数ヶ月前に「のぼうの城」という小説を読んで、それがとても面白かったことがありまして、『探し方を間違えなければ、歴史物小説は結構楽しめるかもしれない!』と思い始めていたことが、被ったのでござります。


文庫とは言え「上・中・下」巻の3冊もある「風魔」。


最初の数ページを読んでみて、(お!これは結構イケるかもしれない!)と感じたので、一気に買って読んでみることにした・・・んだが、上巻を読んでいて、物凄く難儀な展開になってしまった。



ネタばれを極力排して語ると、風魔衆と言うのは「忍び」の集団で、時の小田原北条氏のCIAみたいなものである。
もうね、信長とか秀吉ならまだしも、北条早雲からの北条の系列なんてなると、ほとんど知らない私。千葉県生まれの関東人なのに、知らないというのはもっての外のような気もするが、知らないものは知らないのよさ。



ので、読み始めてからン十頁で、『いかん!北条氏の系列を学ばねば!足利との関わりを学ばねば!』となって、本編から一旦外れて、北条氏について歴史の教科書をひっくり返すことになってしまった。



(後になって知ったのだけど、この小説を読む上で、北条氏についてそんなに詳しく知る必要はなく、粗粗でイメージできればスルーしてよかったです。。)



歴史物小説を読む上で、歴史音痴という致命傷を負っている私に止めをさすのが、登場人物の一人当たりの様々な呼称。幼名から通称、肩書呼び、俗称など、同じ人物を呼び掛ける人に対する位置関係で呼び名がガンガン変わる。覚えるの大変。


そして、似たような名前の登場人物が揃うのもキツイ。
例えば、北条氏は初代早雲はいいとしても、そのあとに氏綱とか氏康とか氏政とか「氏」が踏襲される基本線があったりするもんだから、読者(私)泣かせなのである。



…とは言え、読み始めてン十頁。ここまできたらちゃんと最後まで付き合ったろうじゃんけ! 
ってなもんで、最初は難儀しつつも(読み方を心得ていなかっただけともいうが)何とか上巻を読み切って中巻へと行った。



この段階で、時代は豊臣どっぷりで、家康との確執等が取り上げられるようになってくる。
『そうか、北条をそこまで吟味して覚えておく必要はなかったのか!』とこの時点で初めて気が付いた私。しかも覚えるべきは、そういう面ではないということが判ってきた。



戦国武将のバックで繰り広げられていた忍びたちの行動に、隠れた歴史を読み解くヒントを垣間見つつ読み進んで行くダイナミズムこそが、この本の醍醐味なのだ。


主人公は風魔衆の統領となった「小太郎」。


そして、敵対関係と言うか、真田の側にいる忍び、豊臣に付いた忍び、徳川の甲賀と伊賀を統括する服部、その後継ともなる柳生新陰流の長、その他、ただのテロリスト的忍びとか、風魔衆の敵対関係になった集団とかが入り混じって展開する世界が基本にある。


それを知って、もう一回上巻から読み直すことになった(苦笑)。


ところがね、登場人物の相関関係が見えてくると、これがもう、面白くて面白くてたまらなくなるんですよ。上巻とか中巻は読み直したりしていたもんだから、この2冊を読み切るのに数週間かかってしまったが、下巻は2〜3日で一気読みしてしまった。



いやぁ、「のぼうの城」の主人公「のぼう様」と、「風魔」の「小太郎」はタイプとしては似ても似つかない風貌であり、性格だとは思うのだが、ひとつ、思いっきり共通している要素がある。



『真っ直ぐ』であり『仲間・身内を大切にする』キャラなのである。



下手に算段したりしない。その潔さが、実に爽快で気持ちよいのだ。
例えはあれだが、「ワン・ピース」の「ルフィ」に通じる何かを感じた。


なるほど確かに、こりゃカッコいいし、男も惚れる!


読み終わった後に、「生きていく上での大切なヒント」を頂戴した気がしました。





正しき道理を真っ直ぐ行く、これ、基本だっー!
(あ、いや、ポイントはそれだけじゃないとは思うんですけどね…)(^^;;