「キックの鬼」というアニメ、知って(覚えて)ますか?


ひょんなことから昔のアニメ「キックの鬼」のオープニング・テーマを見た。


キックの鬼」・・・今ではご存知無い方も多かろう。


 スポコン・アニメの金字塔が「巨人の星」とするなら、同じ原作者「梶原一騎」によるその次点に来るであろう作品群の一つ「タイガー・マスク」、その近いところに来そうなのがこの「キックの鬼」である。(まわりくどい表現だな)


 なんたって実話をモデルにしている(らしい)ところに、他の作品には無いリアリティ(らしきもの)が耀く。作品の本編に入る前に実写映像がフューチャリングされている所が斬新であった。
「ドカッ!」「バキッ!!」「ブシェッ!」の擬態音の嵐に続き、「これは、キックボクシングに熱い青春の血の全てを…」と始まる臨場感たぎるナレーション。「ウルトラQ」の「これからの30分…」に匹敵するツカミではないか。


これを見ながら、こたつで寝っ転がっていた幼少期の私。
「キックボクシングってかっこいいなぁ!」と思ったものだが、学校の「将来何になりたい」にはキックボクサーとは答えなかった。(「屋台引きのラーメン屋さん」という物凄い回答をしていた…これも漫画の影響)


キックの鬼 - オープニングテーマ


うーむ、アニメーションには古さを禁じえないが、主題歌には中々今でもイケる部分があるんじゃなかろうか? と、思ったりする。
何より、歌っているのが「沢村忠」ご本人。そう、主人公が歌うテーマ・ソングなのだ。
声がまた良い。ベタだけど渋さ加減はかなり特筆ものだと思うね。露骨にプロの歌手ではないんだけど、なんか雰囲気がかっこよくてね、こう、何って言うか、男くささというかそんなのが醸されてるのがあるんだろう。極め付きは、せっかく歌っているのにその後ろで「ドカッ!」「バキッ!!」「ブシェッ!」の擬態音が止まってないということか。相手ボクサーがことごとく悪役面になってるってのもエグイ。


この歌詞の中で最も印象に残る部分は「今だ〜、チャンスだ〜、真空飛び膝蹴り〜♪」ってとこ。知ってる人なら、絶対そう答える筈。
『真空飛び膝蹴り』という技、名称がサイコーだ。
なんたって「真空」だぜ? 空気、存在しない世界だだぜ!? 無敵だろ!? スペシューム光線ばりの必殺技じゃないですか。


そんなわけで当時よく真似しました。友達も真似してました。
だから「『キックの鬼ごっこ」になると、みんな沢村の役をやりたくて「沢村vs沢村」みたいな不毛状態で、両者飛び膝蹴りを繰り出すという展開になっていた。負けた方が「ニセモノ」の烙印を押されるという凄いルールが出来た。
翌日になると「今日はお前をニセモノにしてやる!」とか言って、また同じ遊びをしてたってんだからムチャクチャだ。


でもね、今回改めてこのOPを聴いてみて、この曲の凄いところは実は違うところにあるという事を知ったのだよ。
件の「今だ、チャンスだ〜♪」のフレーズに入る手前のところ。
「ノックアウトだ〜、右まわしげり〜♪」の部分さ。
ここが、実は特筆すべきフレーズじゃないかと。


ハモリが凄いのだよ。メインボーカルがハモリで「下」を歌い、コーラス的な子供たちが「上」を歌うんだけど、明らかに子供たちの方が前面に出ている。
この部分だけ主役は後ろに下がるのだ。そして、狙いすましたかのように次の「今だ〜♪」で前面に出てくる。まさにくだりの部分で強烈な技を繰り出すために、助走をつけようとして後ろに下がったかのような演出ではないか。と、想像を勝手に膨らましちゃいました。単に上(の声)が出なかったのではないかという説もあるが。


…それはそうと、そういうの脇に置いといても、このハモリフレーズはかなりカッコいい上下の旋律ですね。そう思いましたよ、小林亜星さん。貴方はやはりすごい作曲家だ。




ん? ちょっとまって下さい。
二番の歌詞なんですけど、
「ひじうちかわして〜、ハンマーパンチ〜♪」
ってありますよね。 これ、
「ひじうちかわして〜、ロケットパンチ〜♪」
の方が、締りがよくなりゃせんかい!? ・・・っとなりゃ、
「今だ〜、チャンスだ〜、真空飛び膝蹴り〜♪」よりか、
「今だ〜、出すんだ〜、ブレストファイア〜♪」の方が、もっと強そうな気がするぞ。(違うってね)




余談だけど、このアニメ、時々沢村選手がフレディー・マーキュリーに見えたりする。
昔はこんなことはなかった。