作詞家「安井かずみ」さんのこと。

昭和を代表する作詞家と言えば、その最右翼は間違いなく阿久悠さんになるんだろうが、この安井かずみさんも負けじ劣らず物凄い実績の持ち主なんですよね。


自分、今までロックとかを語るにせよ、歌謡曲を語るにせよ、基本的には楽曲の方に視点を置いていて、歌詞の方から語った事があんまりないことが判明しました。


そこで!…というわけでもないけど、我が国日本が代表する作詞家について誰かの事を書きたくなってきたっす。
勿論、阿久悠は、いの一番に湧いてきたんだけど、この方については色んな方が語っているし、まぁあれなんで、別のどなたかにしようと思った次第。(^^;


そこで登場がこの安井かずみさん。


私生活部分についての何がしは脇に置いといて、彼女の作品群を俯瞰すると、とにかく女性特有の表現方法もさることながら、さながらフランスなイメージが湧いてしまうような不思議な技量を持ち合わせている。


私が彼女の作品で、もっとも響いたのは沢田研二の「追憶」でした。
何故に「ニーナ」という名前の登場人物なのかはわからないけど、「ニーナ」じゃないとダメなんだな、と確信させてしまう不思議ワールド。
「おぉ、ニぃ〜ナぁ〜、忘れ〜られない〜。。許して、尽くして、傍にいて〜♪」です。
普通、「忘れられない」と言う言葉は、文章の最後に登場すべきで「〜が忘れられない」みたいな言い方をするのに、「忘れられない」を先に言ってしまう斬新さが素敵だった。


同じく沢田作品には、「危険な二人」ってのもある。
こちらでは男が振られるギリギリのところを歌いまくるんだけど、その、男の崖っぷち状態が、たまらなく駄々をこねてて、切ないという「不思議かっこよさ」が充満してる。


安井作品で個人的に好きなのは他にもある。
南沙織「夏の終り」、アグネス・チャン「草原の輝き」、辺見マリ「経験」、和田アキ子「古い日記」、『宇宙少年ソラン』(アニメ主題歌)辺りかな。。


殊更「ソラン」はSFアニメの黎明期の作品です。
作詞家いずみたくさんとの協同クレジットになっているんだけど、どういう風に分担したのか知らない。けれど、センスの凄さがある。
「遥かな宇宙から、虹を越えてやってきた〜♪」です。
こういう言葉の紡ぎ方は普通出てこない。「虹」ですよ、「虹」。
「宇宙」に対して「虹」だもんね。この飛び方は中々なもんだ。


和田アキ子の「古い日記」は、ものまねなどで「あの頃は〜、Ha!」があまりに有名になっちゃったけど、じっくり歌詞を吟味するとこれまた強烈な表現に出くわす。
「なぜだか世間にむかって」と言うイメージを「なぜかしら世間には〜♪」というフレーズで対処。この「なぜかしら」ってところにアンニュイな響きがあって、そこに和田さんのパワーボイスが加わる。ミスマッチのマッチングって言うのかな?かなりインパクトが生じたね。
ついでに、この曲の最後の方で「今よりもさりげなく、恋と自由に生きていた〜♪」というのがある。そういう「さりげなく」の使い方があるんだ、へぇぇぇ!と唸ったもんだ。


そんなわけで、強力な作詞家の言葉の紡ぎ方を俯瞰してみると、猛烈に「そうきたかっ!」と膝をぴしゃりと叩きたくなってくるんだな。


自分のお好みの曲でまだあまり歌詞を吟味していないのがあったら、この機会に是非に一度咀嚼してみる事をお勧めします。何気に凄い発見があるかもしれませんよ♪