「青い虚空」を読んだです


 このブログで何度か紹介したことのある作家に「J・ディーヴァー(ジェフリー・ディーヴァー)」ってのがいます。彼の作品で有名なのは、リンカーン・ライム・シリーズ(かなりマニアックな犯人追跡芸の刑事もの)なのですが、この度は彼の「青い虚空(Blue Nowhere)」ってのを読んで、エキサイトしました。


 凄いです、もうね、設定からして凄い。いつか誰かは取り上げるだろうと思っていたけど、まさか2000年明けてすぐの頃に既に執筆されていたとは知らなかった私。。。どういうやつかというと、ネット犯罪に対決を挑むという「ハッカーハッカー」という設定。「ハッカー対警察」みたいのとかはあれど(古くは『ウォー・ゲーム』、最近じゃ『ダイ・ハード4』、日本でも『BLOODY MONDAY』なんかにはそういう匂いがあるよね)、「ハッカーハッカー」と言うのは中々ない。しかも、微に入り細に入り緻密な取材と裏付けのある専門用語の応酬、何年も前の作品にもかかわらず色褪せることのない先見性とロジック、そいでもって作者お得意のジェットコースター的な展開と意表をつくストーリーが読者を思いっきり釘付けにしてくれるのである。


 この作品には、若干のコンピュータ知識・・・というかネット用語とかを基礎知識として持っていないと読者は置いてきぼりを食らわされてしまう懸念があるが、そういった知識が無くても、あんまり深いことを考えずに「刑事・FBIものの捕物帳」という単純構造に割り切って読み進めることができれば、それだけでも十分に楽しめる要素を持っている。第一級の娯楽作品でもあります。


 ストーリーを語るとネタバレになってしまうので、あまり書くことは出来ませんが、とにもかくにも犯人のコンピュータ知識の秀逸さと殺人に至るゲーム感覚のサイコ程度が半端ない。
 作中、やたらと出てくる「ソーシャル・エンジニアリング(敵を欺く為の自己演技・環境誘導)」という技は、あり得そうだけれど、冷静に考えるとかなりの計算と演出が必要なので、やや荒唐無稽さ加減は否めませんが、本編を読んでいる間は「そんなこたぁどうだっていい」位に楽しめてしまいます。まさにジェフリー・マジック。


 んでもって、この犯人を追いかける役回りが、現在服役中のハッカーというのがこれまたハリウッド的で面白い。そのハッカー、かつて犯人と、つるんでいたことがあるってんだから、悪者同士のしがらみ(人間関係)とかも作中のモチーフになっていてそういう側面も楽しめる寸法。あとはアマゾンのレビューとかをご参考にされたし


お勧め度、星4つ。
人によっては星4.5っす。
(これ、私的にかなり上位ランキングのことよ・・・笑)