ロバート・フリップ先生の音楽


RobFripExposure.jpg ロバート・フリップと言えば、言わずと知れたキング・クリムゾンの主催者ですわ。私は、キング・クリムゾンに対してそれなりのリスペクトをしているのですが、彼等の演奏形態(世に言う「プログレ」ね)は、時に激しく難解です。同じ時代に活躍した同じプログレのジャンルの雄、「イエス」や「ELP」と比較しても、明らかに難解です。かなり男っぽいというか、女人禁制的なストイックな世界すら感じてしまうものがあった。男性ボーカルを担当した歴代のグレッグ・レイクやジョン・ウェットンとかの骨太ボイスにもかなり刺激的なものを感じたっけね。
 しかし、クリムゾンも後に活動を休止し、当のロバート先生はソロ活動に入ったり、ある時突然に「これからこのバンドをキング・クリムゾンと称する」とか発言して、リスナーを驚かせたりしたもんです。
 ロバート先生の哲学はちょいとぶっ飛んでまして、それが当たっているかどうかはさておき、方法論が実にヘンテコでありました。その中でも彼のソロ・アルバムとして発表された一枚「Exposure」は、私が買った唯一のロバート先生のソロ・アルバムでしてね。当時、彼は精神世界系か何かの学校に受講参加しており、そこからかなりのインスパイアを受けたらしく、このアルバムの中では、学校の先生の講義内容の一部などをフィーチャリングしたりしている。で、ロバート先生は「今後のロックはこのように進化する」と明言しながら、アルバムタイトルのこんな曲を発表しました。

Robert Fripp - Exposure
http://www.youtube.com/watch?v=hzFsDQeTUT4

 そう、「シャウト」という表現方法ではなく、「叫び」というか「絶叫」を曲中に組み入れたんだよね。これ、新鮮だったけどかなりの違和感を感じた。で、結果的に頭にこびりついてしまった。そういう意味ではロバート先生の勝利かもしれない。私は、それ程のめり込みたくない「危なさ」を感じ取っていたんだけどね。

で、その後、何年も過ぎました。

 「そういう形」でロックが進化しなかったのは、皆さんご存知の通り。つまり、上っ面だけで辿れば、ロバート先生の予測は思いっきり外れたことになる。でも、私は彼の発言をどうこう言うつもりは無い。例えはあれだけど、丁度、年始に日経新聞紙上で「今年の年末には株価はどうなるか」企画で、数ある名だたる企業やシンクタンクのオエライさんが予測して、結果的に誰一人も当たらないのと同じだ。その瞬間の世間全体のマインドから将来を予測するのは、よっぽどぶった切った発想でもない限り可能ではない。そういう意味では、ロバート先生はかなりぶった切った発想で将来を予測したと思う。たまたま彼の切り取り方が違う角度だったんじゃないかな?
勿論、当時はNYニューウェーブとかパンクのムーヴメントの中にあったから、そこから抜けきるのが厳しかったのも否めない。
しかしながら、そう言う中にあって彼の予見でひとつ当たった事がある。当の本人は意識してなかったと思うけど、この曲の中で、女性ボーカルのバックで男性が呟くように「Ex」「P」「O」「S」「U」「R」・・・とタイトルをアルファベットで分解して囁くのだ。この手法、今のラップに通じるんじゃないかなー。面白い。
一方、曲の中で「It is impossible・・・」という謎めいたフレーズが繰り返される。この辺の妙さ加減は相変わらずだ。リスナーを突き放しているとしか思えない硬派ぶり。

 あ、思い出した。大体ねぇ、このアルバム、最初が混声ハーモニーから始まるんだけど、これがもう思いっきり不協和音でね。不安定極まりないサイコの世界なんだ。
 で、部屋の中で電話が鳴る音がして、ドアを開けて誰かがコツコツと足音を立てて近づいてくる音がして、(多分、足音の主が)受話器を取ると、その向うからロックン・ロールが流れてきて本編開始と言う仕掛け。その仕掛けが単純な3コードのR&R。あまりに典型的なR&Rなので、この曲を最初に聴かされた日にゃ、「あ、このアルバム、買って損した」と思わされてしまうのでした。


 さて、このエクスポージャーと言うアルバムに収録されている曲の中で、「洪水」とタイトルされた名曲がある。アルバムのほぼラストである。クレジットには、誰の歌によるものなのかの印字は無かったものだから、てっきり私はこの曲は「フィル・コリンズ」が歌っているものだと思っていた。
 後日、それは「ピーター・ガブリエル」が正解であることを知るんだけど、とにかく、この曲に泣けてしまった。そう、何よりもこの曲に知り合えたことだけでも、このアルバムを購入した甲斐があったと思ったっけね。何でも最後まで聴いてみる事が肝要なのかもしれない。。。(あれ?先般の小説中座の見解とはまるで逆だな>我)

Peter Gabriel - Here Comes the Flood
http://www.youtube.com/watch?v=Ww9JS8dJ9fY

どうです?

 僕はね、歌詞の意味はわかんなかったけど、この曲を最初聴いたとき、何でだか涙が出た。とても刹那くなってしまったんっす。ほんとだよ。いやぁ、ガブリエル先生、上手っす!私ゃピアノ弾けないもんだから、こういう弾きかたりされちゃうと単純に羨ましくなってしまうなー。

うん、そう、メロディーというか、和音というか、声質というか、いろんな要素が絡み合って、ある時ある瞬間に、とんでもなく心を揺さぶられる事ってあります。

音楽って不思議な世界です。