コロッケうどん
いつも行く理髪店のマスターが仰るには、その昔、東急大井町線の駅構内に美味いうどん屋さんがあったらしい。「コロッケうどん」が良かったと。もはや件のお店は姿を消してしまっているが、以来、その影響か立ち食いの蕎麦・うどん屋に行けば、基本「コロッケうどん」を頼むようになってるそうだ。
私は今まで随分と蕎麦・うどん屋さんに行ったけど一度も「コロッケ蕎麦・うどん」の食券を買ったことはない。メニューにあるのは勿論知っている。目につくし。でもチョイスしたことはない。なぜか。
違和感(いわかん)。これです。
「天ぷら」や「かき揚げ」をうどんに乗せるのは分かるんです。しかし、「コロッケ」はアウトオブ理解なのです。あれは『揚げ物』だけど『フライ』じゃないか(訳せば同じか)。「エビ天ぷら」と「エビフライ」は違うでしょ? あれと同じなんですね。
「天ぷらうどん」はアリだけど、「フライうどん」はNGなのです。
うどんの上に乗せるオプションは【ふゎさっ】とか【ちょこんっ】という擬態語が似合う品でなければならないという先入観もあります。コロッケのような【ズシッ】が許されるのは「お餅」くらいではないかと。。
とはいえ、マスターの力説を耳にしたらいずれのおん時にか必ずや行動せねばなるまいと思った。彼の選球眼ならぬ選麺舌は麺種こそ違うがラーメンで実証済みだからです。
で、早速、行ってみたわけ。立ち食いそば屋さんに。
食ってみたわけだ。コロッケうどん。390円。
「お!」
これが感想。
何気に違う食べ物になっちゃうんだね、これ。
麺類特有の「ずるずる感」ではなく、「ぱくぱく感」ですな。
なるほどね〜、そうかぁ、そうくるかぁ、フンフン、…ガハッゲホッ、ゲェーッホ!!
味わい「なるほど」と感心しながら、私はここでとんでもないミスを犯してしまった。
ちょっと絵的に綺麗にしようかと思い、七味とゴマをバランスよく散らしてみたんだが、これがいけなかった。七味がコロッケの上に降りかかり、こいつがうどんをすすった時に舞い上がって一気に気管支に入っちまった。
ゲェーッホ、ガハッゴホッ(涙目)
店内の他のお客さん達の不審そうな視線がきた。私は一気に注目の人だ。店内の話題を一人占めした気分。どんなもんだい!…なんて胸を張れるわけない。
これ以上咳き込むことは許されんかも。
されど内部がジンジンする。喉、痛ーい。。。
ケホケホ…ン、うぇー。
完食ならず店外へ。。
ゴホゴホッ、ゴーッホ! ゴホンゴホンっ…!! う"ー。
蕎麦屋で泣いたの人生初めてかも。
哀しくなった。