Michael Manring;驚異のベーシスト最近型ですね

 個人的な好みのベーシストの話を以前しましたけど、そこで取り上げたアーティストと言えば70年代・80年代に活躍した人達ばかりでございました。ついでに「最近のベーシスト」について、『技の水準は70年代とか80年代から比べると、随分と達者になっているけれど、「大技」としてビジュアル的な「凄さ」を魅せるアーティストが少なくなってきているので、どうもね・・・』なぁんてことも書きました。


 んが、とは言えやはり、凄い人ってのはちゃぁんと今でも生息しておりましてね。
実は、ついこの間までは自分にとって最近の凄いベーシストは、ドリーム・シアターのジョン・マイアングと思ってたんです(ってか、ジョンを知ったのも10年以上前になってしまったし・・・汗)。で、『ジョン以降にはジョンを超える存在なんて出てこないっしょ!(かなり、彼のプレイは頂点を極めてるし)』と、決め打ちしてたんですが、去年だか一昨年に「あ、いた。」となったです。
 その「あ、いた。」さんは、Michael Manring(マイケル・マンリング)さん。実は当人、そんなに若い人ではないんでです、単に私が気がつくのが遅かっただけ〜。


 マイケルさんはジャズの畑に生息しているらしいので、メタル・プログレのジョン・マイアングと比較するのはどうかと思うんだけど、「凄い」という意味では、私の中では同じカテゴリーなんですわ。


Michael Manring - The Enormous Room


どうです?美しすぎるでっしょ!?
バックにはドラムとかの打楽器とか聞こえない、純粋にベースだけのソロの演奏。しかし不思議とリズムを取れるし、ベース・ラインとハーモニックスの和音によるアンサンブルが完璧に構成されている。隙がない。


かないっこないっ。


…演奏しながらチューニングを変える人って、初めて見たっす。


 元来私は、フレットレス・ベースってのは、生理的にあまり受け付けることが出来ない性質でした。「ブランドX」っていうバンドがあって、そこのベーシストのプレイに触れたのが生まれて初めて聞いたフレットレスだったんだけど、とにかくその雰囲気が奇妙で、何やらゾウさんの「ぱおぉ〜ん」みたいに聞こえるのが不愉快で、そいでもってハーモニックスがとんでもなく悲しくて、哀愁が漂いすぎていたのだ。嫌だった。


 それが何時のことだったか、先輩の家でジミ・ヘンドリックスの、あのウッド・ストックでの米国国歌を聴きましてね、「おぉ!ギターが泣いている!叫んでいる!」という感想を持った時のこと。そのジミヘンのウッドストックのレコードの後、続けざまにジャコ・パストリアスのベース(ウェザー・リポートのなんかのライブ盤@海賊)を聴かされましてね、今度は、「うわっ!ベースが泣いている!前向きに泣いている!」なぁんて感想を持ってしまったです。この時のベースがフレットレスだった。


 その時まで「奇妙」の烙印を押していたフレットレス。ジャコの演奏で「凄い」に進化した。ジミヘンに続いて聴いてしまったせいなのか、はたまたジャコの超人技のなせる芸なのか、何がトリガーになったのか不明だけれど、それ以降、フレットレス・ベースの音色にそれほどの違和感を感じなくなった。そういう経緯がある。


 フレットレスのベースを弾いている人って、中々少ないじゃないですか。だもんだから、フレットレスのベースの音色を聴けるだけでも「めっけもの」的な水準に上がってしまう。
なわけで、マイケル・マンリングさんのプレイは、スタートの時点からして既に私には「水準点以上」。それに加えて、この「技あり」芸でしょ?


 ジャコもジョンも凄いし、彼らを超えたとか、そういう表現は適切ではないと思うけど、マイケルのこの独特の表現力、一等賞ものであることは紛れもない事実じゃないかな。


少なくとも、こういう世界観は、初めての「経験」です。


何時の日か、こういうのが弾けるようになれたらいいな・・・と思いつつ、弾けっこないだろう(笑)から、せめて、間近でこういう音楽に身を委ねることが出来たら・・・なぁんて思っています(苦笑)。