ベースギターのリペア・備忘記録

 先日の書き込みにもありました通り、部屋の片隅で眠りこけていたベースを引っ張り出してきて、調子の悪さを痛感した私は「どうしたものか?」と考えあぐねておりました。


 ネックの歪みやら、ノイズやら、ピックアップやら、そういうのを治すよりか、むしろ新しいのを買った方が良いんではないか?・・・そんなことを思ったけど、このベースと共に歩んできた歴史を思うと、もっと付き合って欲しい気もしてくる。
 第一、最近のベースのライン・ナップを見たら、スタンダードなのはさておき押しなべてカタチがかっこ悪い。それって重要!


 幸い、プロのベーシストの方にこの話をする機会に恵まれまして、そしたらその方の利用されているリペアマンを紹介してくれるという展開になった。誠に恐れ多い。
 そのベーシストさん曰く、「下手に楽器店のリペアに出すと、最悪の場合、もっと酷くなって帰ってくることもある」のだそう(経験あり)。もちろん「ちゃんと治る場合もあるけど、そういう『ムラ』はプロにはあってはならない」。(そうですよね。)「そのIbanezのMC(私の持っているメーカー製品名です)なら、ちゃんとしたところで治した方が楽器店リペアを利用したり、新しい楽器を買ったりするよりも絶対良いですよ」と。


早々「お願いします!その人、紹介してください!」となった。


 そのリペアマン当人、「実は現在、アレンビック(有名な楽器メーカーです)の仕事で海外に出かけちゃってるけど、3月になったら連絡が取れるようになる」とのことで、「そしたら、電話して行ってみることにしましょうか。」となりました。


で、実行に移したのが3月9日の仕事帰り。
そうです、東京はン年ぶりの大雪状態になっていた時間帯です。


 スーツにコート、仕事バッグを背負い、肩からベースを引っさげ、片方の手にはビニョール傘。猛然と吹雪く中を時折足を滑らせながら下北沢方面を闊歩する私。


『何で、よりによってこんな天候状態の日に、大荷物状態で歩かなくちゃ(ズルッ!)どわっ!・・っぶねー!!・・・あれ?場所わかんなくなってきたぞ・・・うひー、さぶーっ・・・でんわでんわ・・・っと』


こんな状態で、ようやっと目的地に到着したです。





 面白いことに、リペアマンさんにお会いして、話をしながらリペア作業に入ったら、天候状態云々なんてのは一気に吹き飛んじまった。


 ご自身がベースを弾いていた経緯も手伝ってると思うけど、知識・経験・技量すべからくが第一級のプロ。(そりゃそうだ、プロのベーシスト御用達なんだものね)


 更に驚いたのが、日本にはまだ2台しかないという、スキャニング&リペア・マシンの存在。ハイテクの権化だ。大きさにしたら、電話ボックス4つ分くらいだろうか、その中にベースをセットして、スキャンして、圧を計測し、歪みを計測する・・・そうすることで、ネックのよじれはもとより、弦高、フレット、アタック後の弦の振幅がどういう状況にあり、それをどう調整すればいいかのガイドラインが一発でアウトプットされてくるのだ。おまけに、フレットの研磨をコンマゼロイチレベルで行なってくれるという、とんでもないスグレモノでもある。


 このマシンと手作業の組合せで、なんと2時間でネックの歪み補正、弦高調整、フレット調整、オクターブ補正、電気系統チェック、ピックアップ補正を完了させてしまった。


まいった。


当日お持ち帰り可能なんてのは想像だにしてなかった。


 科学の進化にも驚いたし、プレイする人の要望を細かくヒアリングしながら的確に調整して行くプロの技(例えばネックをどの程度「順反り」にするかとか、4本の弦高をどういう「並び」で揃えるのがその人の好みに合うかとか)に敬服しっぱなしなのでありました。






ともかく、うれしいっ!


♪***(試し弾き)***♪


おぉ! 


なんと弾き易くなっているのことよ!


磨かれたフレットの光り輝き!


本来あるべき形であったピックアップの収まり!


出力。
改めて、アクティブ・ベースであったことを痛感!



リペアの方に聞いたら、これ、決してチープなベースではないとのこと。


「今でもこれを使っているプロのプレイヤーもいるし、第一、ご存知の通り、この『カタチ』は今はない。このスタイルのベースを売り出せば成果があると私も思いますが、このあいだ、そういう話をメーカーとしたら、これと同じのを作って世に出すとなると、少量生産になってしまうこともあるけど、60万円位かかるという話でした。60万ってことはないと思うけど、でも高額になってしまうんですよ、大事にして下さいね。」


 長きに渡って同じ楽器を使っていると、ものにもよるけど、ちゃんとした楽器なら、楽器が「鳴る」ようになってくるのだそうだ。不思議なことに、弦の寿命も延びてくるらしい。楽器自体が鳴るようになるので、弦の負荷が減ってくるという。。。


楽器が馴染み、熟成し、磨かれ、唄いはじめる・・・ちょっと哲学的で、なんか、唸ってしまった。





お家に帰ってきて、私は焼酎を飲みながら暫くまんじりと楽器を眺めていた。
概ねコンディションは、買った時のデフォルト状態に復旧しているベース。
傷やらサビなどは消えてないけれど、月日がこのベースを楽器に成長させてくれているとな!?・・・(ぐびり)・・・いいねぇ♪完全に乗せられていると思うけど、いいねぇ(笑)



うし!


こうなったら「あの曲を練習してみるしかないっ」



Jeff Beck - Star Cycle



えー。。。ベース・パートではなく、シーケンサーで紡がれているメロディを多少平易にアレンジして弾いてみようという試みなのですが・・・



あー。。。



弾き易くはなっても指が速くなったわけではない、ということを再認識しました。(凹)