夢を見た〜シープドック・ドリーム

ある日の朝、小林君(仮称)が会社に出勤すると、上司の鈴木部長(仮称)が小林君を呼びつけた。

「あ、小林君、おはよう、ちょっとこっちに来てくれるかな?」

「え、あ、はい・・・」

鈴木部長は小林君を応接室に招いた。

「いやぁ、朝から呼びつけてすまんね、実は折り入って相談があるんだが。。」

「な、何でしょう?」

聞き返しながら、(オレ、何かヤバイことしちゃったっけ?・・・いや、ないよな)などと自問自答を心の中で繰り返す小林君。

「小林君、率直に言おう、犬は欲しくないか?」

「は?」

「い・いや、我家で飼っている犬なんだが、今度引越しをすることになってね、引越し先では飼えないのだよ、そこで、普段から仕事を頑張っている君に譲ろうかと思ってね」

「えっと・・・だけど・・・私んところはペットNGなんですよ、残念ですが。。。」

「そっか・・・、んーむ、弱ったな、小林君、誰か受けてくれる人を知らないか?」

「犬種は何ですか?」

「わからん・・・実は、今日、連れてきている、そうそう!見てくれるか!?」
小林君、部長に連れられ地下の駐車場に行くと、その犬がいた。。。。というか、羊。

「ひ・・・羊?・・・イヌっすか?」

「英訳すればシープ・ドックだな。」

「いや、そーゆー話ではないです。」

 シープドックという犬種は存在する。しかし、それは牧羊犬のことであり、眼前のそれとはまるで違う。イングリッシュはばふばふした犬だし、シェトランドはよく鼻デカイヌ写真としてとりあげられている。アニメなどでもよく登場するキャラ、シープドック。だが、小林君の目の前に存在する、部長が「犬」と呼ぶ生命体は、彼が見る限りどうしても「羊」だった。

小林君は、おそるおそる部長に発言する。

「恐れながら、部長、ここにいるのは羊ではないかと思われるのですが・・・。」

「うむ、よくそう言われるんだよ、小林君。でもね、モモ(生命体の名前)はれっきとした犬なのさ。」

「はぁ。」

「…そうだ!(部長、柏手を打つ)、小林君!、田中さん(仮称)の家ではシープドックを飼っていると聞いた事があるぞ。今思い出した、うん、そうだ、彼女に聞いてみてくれないか?なに、一匹位増えたって、そんなにじゃまにはならんだろう。いや、それよりか『友達』が増えるんだ、感謝されても迷惑がられることはないはずだ、うん、そうだ、そうに違いない、そうしてくれ、よし、今すぐ彼女の家に訪問してこい。」

有無も言わさず、小林君は田中さんの家に向かった。




田中さん宅到着。

ノックしたが返事がない。

留守かな?

耳をそばだてると家の中から声はする。
田中さんの家庭は娘二人の四人家族だ。きゃっきゃきゃっきゃと騒ぎまくっている。女系家族の独特の盛り上がりをしている。

もう一度ノックした。返事がない。音が聞こえないのだろうか?

入口ドアの前でどうしようか迷っていると、小林君の背後から「何か家に用かね?」とダンディな声が聞こえた。

おっと、ここのご主人、ご帰宅か。

「あ、どうも、はじめまして、私、田中さんの勤務する○○株式会社の小林と申します。実は今日は田中さんに用件がありまして、お邪魔致しました次第です。」

「私が代わりに伺おう。」

これまた有無を言わせない響きがある。

「羊、要りませんか?」

「なに?」

その反応は非常に威嚇的だった。次に続く言葉が思い浮かばない小林君、とっさのひとことが妙になってしまった。

「もしかすると、犬かもしれません。」






目が覚めた。
小林君=私 でした。